マイクロバスの先にあったもの

10年ブレンド

母がデイサービスに通い始めた頃、

正直、僕は半信半疑だった。

「本当に続くのか」

「嫌にならないか」

最初のうちは、マイクロバスで何人もの利用者と一緒に施設へ向かう道中の話は、ほとんど聞かなかった。

初対面の人ばかりで、きっと緊張していたのだろう。

けれど、施設での話は少しずつ増えていった。

“衰えさせない”工夫

施設では、

  • いかに筋肉を落とさないか
  • ボケ防止につなげるか
  • そして、いかに楽しんでもらうか

を意識したカリキュラムが組まれているらしい。

緩いラジオ体操。

しりとり。

紙風船でのバレーボール。

ボーリングや的当て。

どこか、幼少期の遊びに似ている。

「今日は的当てをやった」

「紙風船、なかなか続かないんだよ」

電話越しの声は、思いのほか弾んでいた。

楽しんでいる、という事実

僕は勝手に、

「高齢者向けのプログラム」だと思っていた。

でも母にとっては違った。

“やらされている”のではなく、

ちゃんと“参加している”。

そこに、少し驚いた。

食事という安心

実は、もうひとつ助かっていることがある。

食事だ。

田舎で一人暮らしをしていた頃は、

油物が多く、栄養の偏りが心配だった。

けれど施設では、健康面を考えた食事を出してくれているらしい。

「今日の煮物はね」

そんな話を聞くたび、こちらも少し安心する。

僕の思い込み

デイサービスは、

“預ける場所”だと思っていた。

でも今は違う。

あそこは、母が

もう一度社会と繋がる場所だった。

マイクロバスの先にあったのは、

衰えを防ぐ場所ではなく、

笑顔を取り戻す場所だったのかもしれない。

喫茶店でコーヒーを飲みながら、そう思う。

整えるとは、

全部自分で抱え込まないこと。

頼ることもまた、

10年ブレンドの大事な材料なのだろう。

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